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Home Next Generation 【2017年7月21日- コロンバス・アンダーグラウンド誌】アルバムレビュー『Please Don't Turn Out the Lights』

【2017年7月21日- コロンバス・アンダーグラウンド誌】アルバムレビュー『Please Don't Turn Out the Lights』

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Columbus Undergroundの記事より

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『Please Don't Turn Out the Lights』のアルバム・レビューです。

ビー・ジーズ第二世代アーティストによるトリビュート・プロジェクト、Gibb Collectiveのアルバム『Please Don't Turn Out the Lights』のレビューが「コロンバス・アンダーグラウンド」誌(オンライン版2017年7月21日付)に掲載されました。プロジェクトの経緯を説明するサマンサ・ギブとのインタビューを含む内容を、以下に簡単にまとめてご紹介します。

真のファミリー・アフェア ― 地元コロンバスのアーティスト、サマンサ・ギブによる意欲的なビー・ジーズ・トリビュート・アルバム

 

地元のシンガー・ソングライター、サマンサ・ギブに昨夏インタビューしたときに、来年(つまり今年)発表予定のプロジェクトがあるのだといっていたが、それがこのアルバム『プリーズ・ドント・ターン・アウト・ザ・ライツ』だったわけだ。サマンサの父親モーリス・ギブとおじにあたるバリーとロビン、すなわちビー・ジーズのレガシーに捧げられたアルバムである。

サマンサは自分でも歌っているほか、この音楽一家の第二世代(つまり彼女のいとこたち)を結集させて、ビー・ジーズと末弟アンディ・ギブの曲に取り組んだ。アルバムは5月21日にアナログ盤で発売され、6月16日(ちょうど父の日)にデジタル発売された。

ビー・ジーズのカタログの膨大さ、人気の高さを思うと、モーリスとロビンの没後に、きちんとしたトリビュート・アルバムが制作されなかったのは不思議な話だが、最後のひとりとなった長兄のバリー・ギブも71歳、この10年ほどは一部のリイシューに携わった以外には、ギブ4兄弟の曲を集めたアルバム・セット『ミソロジー』をサポートするワールドツアー(2013~2014年)を実施するにとどまっている。

今年に入って、2月の第59回グラミー賞授賞式でのトリビュートと、4月のゴールデン枠に登場し大好評を博したCBSスペシャルと、メジャーなトリビュートが2つ実施された。後者にはジョン・レジェンド、スティーヴィー・ワンダー、エド・シーラン、セリーヌ・ディオン、リトル・ビッグ・タウン、デミ・ロヴァート、キース・アーバンなど錚々たる顔ぶれが参加した。

そのインパクトの大きさたるや、ビルボードのアルバム・チャートに、古いビー・ジーズのコンピレーションが4つも返り咲いたほどである。デジタル化された楽曲のダウンロードは6万3,000件も伸び、ストリーミング利用は10,000万件にも及んだ。新しく発売されたコンピレーション『タイムレス』も、先月バリー・ギブがグラストンベリーに登場した影響で英国でベスト10入りしている。

こうした鳴り物入りのビッグ・プロジェクトに比べて、ごくごくさりげなく発表されたギブ・コレクティブのトリビュート『プリーズ・ドント・ターン・アウト・ザ・ライツ』だが、家族の手によるトリビュートならではの、曲との深い結びつきが、このアルバムを特別なものにしている。

この5月に、サマンサはこう話してくれた。「わたしたちは、それぞれ自分が惹かれる曲を選んだのだと思います。ギブ兄弟のカタログは膨大なので、そこから1曲だけ選べといわれたらとても難しいけれど、ひとりひとりが自分にふさわしい選曲をしました。どの曲にも深い思いがこもっています。今回のプロジェクトでは、それぞれに好きなようにやってもらって、独自の感性で表現してもらいました」

タイトルトラックは、ビー・ジーズの1972年のアルバム『トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン』に入っている、あまり知られていない曲の忠実なインタープリテーションだ。ロビンの長男スペンサーが冒頭の数行を歌う。父親の声をまねているわけではないが、声の調子やヴィブラートにロビンを思わせるものがある。比べて、続くバリー家の長子スティーヴン・ギブは、ビー・ジーズの滑らかなハーモニーとは似ても似つかないダミ声のボーカルだ。モーリスの長子アダムとアンディの娘ピータとサマンサも加わって、曲は完成する。

「全部の曲を聴いてみて、この曲に出会ったんです」と、サマンサはこの曲を中心に据えた理由を説明してくれた。「繰り返し、繰り返し、聞いてしまって…。聞いたとたんに大好きになりました。それから、そういえば長子にあたるいとこが全員このアルバムに参加しているんだな、ということに気がついて、そのそれぞれにソロパートを歌ってもらって、全員でハーモニーを歌ったらいいなあ、って思ったんです。全員がそろったのを聞いたら、もう素晴らしくって。息をのむほどでした」

このアルバムには、その他にもいろいろと美点が多いが、中でも魅力的なのは、お決まりのビー・ジーズの大ヒット路線から離れて、アーティストが冒険したときだ。スペンサーは、ビー・ジーズの1981年のアルバム『リヴィング・アイズ』からロビンが歌った「ドント・フォール・イン・ラヴ・ウィズ・ミー」を選んで、せつせつと歌った。ピータはアンディ・ギブの1978年の大ヒットアルバム『シャドウ・ダンシング』のA面から、シングルカットされた3つのヒット曲に挟まれてひっそりと入っているバラード「フール・フォー・ア・ナイト」をカバーした。原曲の訥々としたギターとストリングスに代わって、シンセでベースとアンビエントを多用しているが、父親アンディが19歳で書いた情熱的な歌詞(「苦しみが終わったら/ぼくが君を癒してあげる/時の流れが君をぼくのところへ連れ帰ってくれるだろう」)に感じられる普遍的な真心は、電子ミュージックになっても変わらない。

アルバム中の楽曲には、実はかなりEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)が多い。バリー・ギブが1965年に書いて、ビー・ジーズのオーストラリア時代の曲を集めた1970年のコンピレーション・アルバム『ノスタルジア』で初登場した「モーニング・オブ・マイ・ライフ」(訳注 本人たちもこのタイトルを使うことが多いですが、日本では映画『小さな恋のメロディ』のオープニングに使われてシングル化もされたため、「イン・ザ・モーニング」というタイトルの方が知られています)は、サマンサとアダムのソフトなボーカルで原曲の持つやさしい雰囲気が生きている。バリー家のトラヴィスはサマンサの助けを借りて、1968年の名曲「獄中の手紙」を一種抽象的にカバー。このアプローチは、ビー・ジーズの『ファースト』アルバムに入っていたソウルフルなバラード「誰も見えない」にも共通していて、歌うのは4兄弟の妹にあたるベリ・ギブ=ローズ。サマンサは、形式より大切なのは気持ちだという。

「参加した全員がそれぞれ独自のアプローチで取り組みました。スティーヴンとスペンサーはボーカリストとしてだけでなく、ギターの腕前も披露しています。トラヴィスはビー・ジーズの名曲をみごとにEDMにしてみせました。兄アダムはボーカルとピアノで参加して、すてきな歌声と温かさを曲に与えてくれました。ピータは、そのボーカルとスタイルで、お父さんのアンディの曲をすっかりクールに変身させてしまったし。参加した家族の全員が歌に深い思いを込めてくれたと思います」

スティーヴ・ギブは貴重なモーリス・ギブのリード曲「オンタイム」をチョイス。ギター中心のスワンプロックをさらにワイルドに。これも『トゥ・フーム・イット・メイ・コンサーン』からの曲だ。スティーヴがミュージシャンとしてのキャリアで参加してきたハードロックのバンドの曲みたいに聞こえるこのバージョンこそ、ビー・ジーズの持つ懐の深さをみごとに証明しているといえそうだ。

また、このアルバムには「エンジェル・オブ・マーシー」のニュー・バージョンも収録されている。バリー、ロビン、モーリスが1995年に書いたこの曲を、実はその数年後にサマンサ自身がモーリスと一緒にカバーしているのだ(『ミソロジー』所収)。この時のコラボレーションがサマンサのキャリアの原点と言って良い。

父と一緒に曲を書いたのは、わたしの人生で最高の経験のひとつでした。父はソングライターとして、ミュージシャンとして、ほんとに幅が広くて、わたしたちのアイディアに対してもとってもオープンでした。こちらを信頼してくれていたんです。父が死ぬまでずっと一緒に曲を書いたり、レコーディングしたりしていました。ラザロとわたしは毎日、父とスタジオに入っていたんです」

サマンサがカバーしたのは、50年前にビー・ジーズの国際デビュー曲となった「ニューヨーク炭鉱の悲劇」だ。サマンサのバージョンはほぼアカペラで、オリジナルとはやや異なる音の世界を構築しているが、やはりこの世のものならぬ雰囲気がある。原曲は停電中だったポリドール・レコードの暗い階段で書かれたといわれている。

「この曲のレコーディングはとても個人的な体験でした。まず、どんな雰囲気にしたいか、ラザロと構想を話し合い、それから彼がトラックを作成して、フロリダのスタジオでレコーディングしてくれました。それを送ってくれたので、わたしはオハイオにある自分の小さなスタジオでボーカルを入れたんです。部屋を暗くして、ヘッドフォンをつけて、自分の世界に入り込んで。曲と、そして父と、特別につながっていると感じることができました」

プリーズ・ドント・ターン・アウト・ザ・ライツ』は、また、国境を超えて、一貫性のあるプロジェクトを仕上げることができるということの証明でもある。参加アーティストの多くは、サマンサのホーム・スタジオとは別の大陸に住んでいたりするのだ。しかしテクノロジーのおかげで、距離の問題を乗り越えることができるとはいえ、技術だけでは解決できない障害もいろいろとある。

「ほんとにいろいろ!(笑)」と振り返るサマンサだ。「一番の問題は各自のスケジュールと時差でした。でもみんなの力で何とか乗り切ることができました。今回のプロジェクトの鍵はコミュニケーションですね」

点と点を結ぶビジョンの持ち主の存在も有効だった。「とにかく大切だったのは、誰もが自分のやりたいことをやって、自分が選んだ曲を自分のものに仕上げることでした。単独で仕上げた曲もありますが、全体を一枚のアルバムにまとめ上げたのはわたしの音楽上のパートナーで、今回のメイン・プロデューサーだったラザロです」

アルバムを締めくくるのはロビンの末息子ロビン・ジョンが歌う「ジョーク」。父親の代表曲だったバラードだ。スペンサーのように、彼も父親のあの特徴のある声質のなにがしかを受け継いでいて、悲しいと同時に高揚感のあるオマージュになっている。美しくも悲しい歌詞とこの世のものとも思われないようなメロディを聞くと、史上最も影響力を持ち、愛されたグループのひとつとして、ビー・ジーズが君臨し続けた理由がよくわかる。同時代にも、それ以降にも、あれほど見事な、普遍的な魅力を持つ楽曲のカタログを生んだグループは数少ない。

『プリーズ・ドント・ターン・アウト・ザ・ライツ』は、その卓越した音楽的レガシーに対して愛情をこめて捧げられたトリビュートだ。サマンサは、60年の時を経てビー・ジーズが愛され続けるのは、ギブ兄弟がさまざまな聴き手に訴える力を持っていたからだという。

「ほとんどの曲が時代を超えたタイムレスな魅力を持っています。ビー・ジーズはこちらの心に語りかけてくるような楽曲を作る力に秀でていました。どの歌も、愛を、別れを歌い、心を開き、思いをつなぐことを歌っています。どれも現代にも通じる大切なテーマです」

                                             by Grant Walters

なお、ベリ・ギブ=ローズさん(かつてのベリちゃん)は実際には一番上のお姉さんレズリーさんのお嬢さんですが、おそらくレズリーさんが再婚されたときにギブ家のご両親の養子になったようで、プレス資料でも4兄弟の妹扱いとなっています。

これがおそらくこれまでに出た一番”濃い”このアルバムの論考ではないかと思います。サマンサさんが語るビー・ジーズの魅力は、さすがの洞察に満ちています。間違っても、「ビー・ジーズの魅力は美しいメロディと素晴らしいハーモニーです」なんて言わないでくれて良かった! (それはもちろんそうですが、それはあくまで外面的な要素の一部であって、彼らの本質的な魅力はもっと深いところにあるわけですから)

アルバム『Please Don't Turn Out the Lights』は、Gibb Collectiveのサイトから注文できるほか、アマゾンからもデジタルでアルバム全体またはトラック単位で購入できます。

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